研究室の紹介

各診療部門の案内

血液部門

Division of Hematology and Oncology

資料

わが国の小児がんサバイバーの健康・社会生活状況の実態解明に関する大規模調査研究に関する情報開示(PDF)

肝胎児性肉腫の原因遺伝子解析に関する情報開示(PDF)

小児がん在宅緩和ケアに関するアンケート調査結果(PDF)

移植関連血栓性微小血管障害における補体関連遺伝子の変異解析についての研究(PDF)


治療している疾患

 

一般血液疾患:貧血,好中球減少症,特発性血小板減少症,遺伝性球状赤血球症など
造血器腫瘍:白血病,悪性リンパ腫,慢性骨髄白血病,ランゲルハンス細胞組織球症
固形腫瘍:神経芽腫,横紋筋肉腫,骨肉腫,胚細胞性腫瘍,脳腫瘍など
造血器障害:再生不良性貧血,造血障害(小児不応性血球減少,RCC)
先天性免疫不全症:無ガンマグロブリン血症,分類不能型免疫不全症など
血液凝固異常:血友病,フォンビルブランド病など

治療担当者

責任者の坂田尚己は、日本血液学会専門医・指導医、日本小児血液・がん学会専門医・指導医、造血細胞移植認定医の資格を有し、20年以上にわたる豊富な小児がんの診療経験を有しています。

診療内容

 

白血病および悪性リンパ腫については、日本小児白血病研究会(JACLS)の施設として日本小児がん研究グループ(JCCG)の血液腫瘍分科会(JPLSG)の全国規模の臨床研究スタディに参加しています。
また、再発・難治性疾患に対しては、同種造血幹細胞移植を血縁あるいは非血縁ドナーより施行しており、骨髄バンク、臍帯血バンクの移植認定施設です。

小児悪性固形腫瘍は、小児外科、整形外科や放射線科などの関連科とともに集学的治療を行っております。
小児血液・腫瘍性疾患の治療成績は、近年、飛躍的に向上しています。
私たちの施設では、2004年~2017年までに新規診断例173例の治療実績があり(表1)、治療を終了して3年以上経過した103例の生存率は87.6%です(図1)。

よって治療の最終目標は、治療に伴う晩期障害(後遺症)の残らない「治癒」と考え、それを目指した診療をしております。
小児血液・腫瘍性疾患に対する造血幹細胞移植の実績を表3に示します。
全体の治療成績は、同種移植78.9%、自家移植72.9%です(図2)。

特に造血幹細胞移植では、移植前に行う前処置という放射線や抗腫瘍剤を用いた治療は、小児の場合、一般的には12グレイの全身放射線照射(Total Body Irradiation、 TBI)や高用量のアルキル化剤を使用します。
これらの治療により骨髄機能は移植をしないと自分の力では回復しませんので、骨髄破壊的前処置法と言います。治療を受けられる年齢にもよりますが、この前処置法を受けられますと、移植後の成長発育障害(低身長、体重増加不良)、内分泌障害(甲状腺ホルモン機能低下症、性腺機能障害)が高い確立で認められます(図3左)。
私たちの施設では、症例によってはフルダラビンという薬剤を併用して、12グレイのTBIや高用量のアルキル化剤を使用しない毒性を軽減した、骨髄非破壊的前処置法(Reduced Intensity Conditioning、 RIC)を用いて移植をしています。
移植片の種類によっては(さい帯血)、3グレイの低用量のTBIを併用する場合もあります。

RICでは、免疫抑制作用が強く宿主の拒絶反応が抑制されることで移植片が生着しますが、抗腫瘍効果は従来の方法に比較して減弱します。
移植前の治療により十分に疾患がコントロールされていることが必要となります。
私たちの施設では、これまでに予後不良因子をもつ小児がん16例に、寛解期にRICを用いた移植を行い全例が生存しています。
その中で、移植後に健康な赤ちゃんを出産された症例も経験しています。
また、成長発育障害や内分泌障害(甲状腺機能低下症、性腺機能障害)の発症も認められていません(第56回日本小児血液・がん学会2014年岡山で報告)。

療養環境においては、羽曳野養護学校分教室(小・中学校)が院内にあり、経験豊富な看護師、チャイルドライフスペシャリスト、病棟保育士(3名)、医療ソ-シャルワーカー等と連携し、がん拠点病院である特色を生かしたきめ細やかなケアを実践しております。
当院は小児がん連携病院であり、また、日本小児血液・がん専門医研修施設として専門医の育成にも力を入れています。

当科で行っている治療の特色

 

・造血幹細胞移植は移植前に遺伝子検査などで、十分に疾患がコントロールされている場合は、毒性を軽減したRICを用いることで、晩期障害を最小限にして高い治療成績をあげています。。

・高校生以上のAYA (Adolescence & Young Adult)世代には、白血病を初めとした小児がんが発症します。
しかし、色々な要因で治療成績は、小児例より不良です。 私たちの施設では、AYA世代でも小児がんの診断例は、治療経験が豊富な小児科で治療を行っております。 。

治療実績(2004年4月~2019年12月)

■表1:診断名と症例数

急性リンパ性白血病:51例
急性骨髄性白血病:17例
悪性リンパ腫:20例
骨髄増殖性疾患(JMML、CML、TAM):15例
再生不良性貧血(含む造血障害):14例
ランゲルハンス細胞組織球症:8例
脳腫瘍:8例
神経芽腫:10例
その他固形腫瘍
(横紋筋肉腫,胚細胞性腫瘍,骨肉腫,肝芽腫等):31例

計:173例

■図1:生存率

上記の小児がん103例の全生存率は86.7%です(2017年3月末時点)

生存率

表2:造血幹細胞移植の治療成績(2004~2019年)

移植片種類と移植数(回)

造血幹細胞移植 自家 血縁:骨髄 血縁:末梢血 非血縁:骨髄 非血縁:さい帯血 合計
症例(回) 16 18 15 18 6 73

□診断名と移植数(回)
急性リンパ性白血病:13
急性骨髄性白血病:13
悪性リンパ腫:6
骨髄増殖性疾患(CML, JMML):7
再生不良性貧血・造血障害:11
小児固形腫瘍:23
合計:73

■図2:造血幹細胞移植の生存率
同種移植 (Allo) 79.2% v.s 自家移植 (Auto) 82.5%

造血幹細胞移植の生存率

■図3:骨髄破壊的移植(MAC),骨髄非破壊的移植(RIC)の成長曲線


骨髄破壊的移植(MAC),骨髄非破壊的移植(RIC)の成長曲線

近畿大学医学部 小児科学教室

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