患者さんとそのご家族へ

病気の話

腎臓病

腎臓病と聞くと浮腫み(むくみ)が出たり、尿がでなくなったりといった症状を想像される方が多いと思います。
以下に説明するネフローゼ症候群では確かにそういった症状で発見されますが、腎臓病の多くは無症状であることも少なくありません。
学校検尿は腎炎などの早期発見のための有効な手段です。検尿異常を認めた際は、無症状でも受診することが大切です。
検尿異常があっても、必ずしも運動や食事制限が必要ということではありません。適切な診断と適切な生活管理をさせていただくことも私たちの役目です。
腎臓病と診断されても、お子さんと一緒に考え、一緒に治していきましょう。

 

以下に代表的な腎疾患の説明をさせていただきました。

 

1. ネフローゼ症候群

 

ネフローゼ症候群は、2歳から4歳にみられる頻度が高い腎臓の病気です。
血液中の蛋白が尿中に大量に漏れることで、血液中の蛋白が低下する病気です。
急に体重が増えたり、顔や足がむくんできた、尿が非常に少ない。などが主な症状です。一部は学校検尿の尿蛋白がきっかけで発見されることがあります。

 

ネフローゼ症候群は様々な研究がなされていますが、いまだにはっきりとした原因がわかっていません。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質をもつお子さんが比較的多いことから、免疫やアレルギーの異常が原因のひとつとも言われています。

 

治療の中心はステロイドであり、入院して治療を行います。約70%のお子さんは1週間前後で尿蛋白が消失し、顔や全身のむくみも軽くなります(寛解)。
初発の場合は、再発予防のために、4週間同じ量を内服した後に、ゆっくりと減量していきます。
副作用の点から、ステロイドは怖い薬という印象をお持ちの方が多いと思いますが、現在ステロイドにまさる薬はありません。
副作用に注意しながら、安全に使用していきます。

 

ネフローゼ症候群の特徴は、いったん寛解しても80%くらいのお子さんが再発することです。
ネフローゼ症候群は経過により主に以下のように分類されます。

 

①頻回再発型ネフローゼ症候群
 ステロイドによって寛解するにもかかわらず、発症(初発)から半年以内に2回、もしくは任意の1年間に4回以上の再発を繰り返す場合。
ネフローゼ症候群全体の30-40%が頻回再発型(ステロイド依存性を含む)とされています。

 

②ステロイド依存性ネフローゼ症候群
 ステロイド治療中や終了から2週間以内の再発を2回繰り返した場合。

 

③ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群
 4週間のステロイド治療にも関わらず尿蛋白が消失しないタイプで、約10%を占めます。初発時から抵抗性の場合もあります。

 

頻回再発型ネフローゼ症候群やステロイド依存性ネフローゼ症候群では、ステロイド治療期間が長期にわたるため、ステロイドの副作用の頻度が高く、また強く認めることが多いため、免疫抑制薬を併用します。
本邦のガイドラインではシクロスポリン(商品名:ネオーラル)とシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)、ミゾリビン(商品名:ブレディニン)が推奨されています。
また、上記以外の治療法として、適応を十分に検討したうえで生物学的製剤であるリツキシマブ(商品名:リツキサン)の投与を行うこともあります。

 

ネフローゼ症候群は一般的に予後は良好であり、腎機能が低下することはありませんが、ステロイド抵抗性であったり、ネフローゼ症候群の原因が巣状糸球体硬化症と診断された場合、腎不全にいたる可能性があります。

2. IgA腎症

 

IgA腎症は、小学校高学年から中学生時期に発症する慢性糸球体腎炎の中で最も頻度の高い疾患であり、日本人を含むアジア人種に多く認められます。
小児の場合、ほとんど症状なく、学校検尿で発見されることが多いですが、発熱に伴って認める暗赤色の尿(肉眼的血尿)がきっかけで気づかれることもあります。

 

尿、血液検査、および超音波検査でIgA腎症の確定診断はできないため、入院のうえ、腎生検(腎臓の一部を針で採取する検査)を行う必要があります。
IgA腎症の分類と腎炎の程度を判定し、治療方針を決めます。

 

IgA腎症の治療は、腎炎の程度が強い場合はステロイドを中心とした多剤併用療法を行い、扁桃腺摘術を併用することもあります。 腎炎の程度が弱い場合には降圧薬の内服を行います。


近畿大学医学部 小児科学教室

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